7. Self-organising spaghetti monster

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Summary
染色体を分配する紡錘体の構造の安定性を解析した論文を紹介しました。
Starring
エビ、イシ
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完全版はこちら -> https://gist.github.com/StopCodonfm/29bdae1f054efc669afac638b509bb88

「ついに DARK を観終えた」 ... Episode 1 で触れた、Netflix オリジナルドラマ DARK についての話。4 周したイシも最終回は未視聴だった。
ドキュメント 72 時間 ... NHK 制作のドキュメンタリー番組
Long et al. Journal of Cell Biology (2020) ... 今回紹介した論文。フリーアクセス。エビが論文を読んだ当時は気がつかなかったが、本論文は Jounral of Cell Biology 誌の Editors' picks 2021 に選出されていた。
紡錘体 ... 染色体を分配する巨大な分子装置。
動原体微小管 (Kinetochore microtubules) ... 動原体に結合する微小管。
Kinetochore fibres (K-fibres) ... 上記の動原体微小管などが複数集まって形成される微小管の束。紡錘体の極と動原体をつなぐ。分裂期に K-fibres に特異的に局在するタンパク質が報告されており、興味深い。
ブカティーニ ... 中が空洞の細長いパスタ。ざっくりと微小管の直径はブカティーニの直径の 10 万分の 1 のサイズ。
「THE CELL」... Molecular Biology of THE CELL のこと。手元にあった第 6 版は約 1,600 ページある。細胞分子生物学の「鈍器」。
Mitchison and Kirschner. Nature (1984) ... Tim Mitchison と Marc Kirschner による、微小管の動的不安定性 (dynamic instability) を報告した論文。
Tim Mitchison 本人が出演する動画
Dumont and Mitchison. Current Biology (2009) ... Sophie Dumont と Tim Mitchison による紡錘体内の力と紡錘体の長さ (構造) についての総説論文。
紡錘体の構造が大事 ... 紡錘体の構造は紡錘体の機能に重要であることがわかっており、したがって紡錘体の構造異常は染色体の分配異常とそれに伴う異数性や細胞死、がん化につながると考えられている。
Researchat.fm さんの kinetoplasmid 回
Akiyoshi, Sarangapani, Powers et al. Nature (2010) ... 出芽酵母の動原体を試験管系で再構成した論文。動原体にかかる張力そのものによって動原体と微小管の結合が安定化する機構があることを示唆した (動原体に 5 pN 程度の力を加えると動原体と微小管の結合時間が最も長くなる)。本編では昆虫細胞で発現させたと述べたが、これはエビの間違いで正しくは出芽酵母からでした。
ポイントセントロメア ... 出芽酵母のセントロメア領域 (動原体が形成される染色体上の場所) に含まれる DNA は 120 bp 程度で、単一の微小管と結合する。
Photoactivation ... 特殊な構造の不活性型蛍光タンパク質に強い光 (レーザー) を照射して活性型に変化させること。例、PA-GFP (GFP T203H) (Patterson and Lippincott-Schwartz. Science (2003)) や Dendra2 (Chudakov. et al. Nature Protocols (2006))
Photobleach ... 蛍光タンパク質に強い光 (レーザー) を照射して光褪色させること。
「熱い自説」... Episode 6 「ずっと俺のターン!」 参照。
Walther Flemming ... ドイツの細胞学者 (1843-1905)。当時 Flemming は技術的な限界により紡錘体を詳細に観察することができなかった。しかしながら Flemming のスケッチには紡錘体構造 (たくさんの繊維からできた構造) を示すイラストがはっきりと残されていた。この Flemming の紡錘体のスケッチは、1899 年に出版された Alfred Fischer による本などの影響で固定細胞の染色によるアーティファクトだと考えられるようになった。しかし、後述の Shinya Inoué が 1950 年代に偏光顕微鏡を用いて生細胞の紡錘体および紡錘体を構成する繊維状の構造 (=後の微小管) を撮影することに成功し、長年にわたる論争に終止符を打った。
Shinya Inoué ... アメリカの生物学者 (1921-2019)。ライブセルイメージングの開祖。Inoué らは紡錘体を観察した研究の後に、重水や圧力を用いて分裂期を阻害し、それらストレスに対する紡錘体の応答を観察した。一連の実験は微小管がダイナミックにターンオーバーを繰り返すことを示唆し、細胞生物学者は (1) 重合によって生じる push する力 (2) ATPase モータータンパク質のスライディングによって生じる力、の 2 種類の力を細胞骨格が生み出すと考えるようになった。実際にこの仮説が提唱された後、筋収縮に関わるミオシンなど (Haxley. Science (1969)) が発見されていく。これらのモータータンパク質は真核生物でのみ見られるので、原核生物では細胞骨格 (ParM など) の重合によって生じる push の力によってゲノムが分配される。
Inoué 本人が出演する動画
Mitchison. Cell (2020) ... Shinya Inoué に対する Tim Mitchison の追悼文。この追悼文によると、化学固定して得られた観察像に対して Inoué は生涯を通じて懐疑的だったらしい。

Editorial notes

紡錘体に対する愛が溢れてしまった (エビ)
ぼくは最近フジッリが好きです (イシ)
収録日: 2021.07.03
編集: エビ

7. Self-organising spaghetti monster

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7. Self-organising spaghetti monster
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