ep9-3「本の読み方 スロー・リーディングの実践」(平野 啓一郎さん)

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「本の読み方 スロー・リーディングの実践」(平野 啓一郎さん)も3回目。
(今回はちゃんと冒頭で二人とも名乗りました!)

夏目漱石のこころを題材に、平野さんだったらどう読むのか、というご紹介をしていきます。
本の後半部分の解説ですね。
ちなみに、構成としては上中下の三部作。
上が「先生と私」。中が「両親と私」。下が「先生と遺書」。
カンタンなあらすじ紹介の上で、時代背景や作者の意図などに思考を飛ばしながら読んでいきます。

背景としてあるのは、明治から大正に変わる人々の価値観が激動していくとき。
この作品の中での「先生」という言葉には、何かを学ぶ対象としての敬称ではなく、
先の時代を生きた人、この作品の場合は明治時代を生きた人、という意味が込められている。
つまるところ、明治時代の文化や思想を象徴する存在として使われている。
たとえば、主人公の父親や兄は先生を評して曰く
「能力があるのに、それにふさわしい仕事についていない無能な奴だ」by 父親
「エゴイストだ」by 兄
この辺りも、主人公の父親や兄に、新しい時代の価値観を代表させてしゃべらせているらしい。
「こころ」という作品には、常識が大きく変わっていく時代を生きる人の悩みや考え方が、本に投影されている。と言っている平野さん。

作者の意図などを意識しながら読むとはどういうことか、を粟野さんが解説しています。



ところで。
明確なメッセージ性や意図が何なのかがつかみにくい作品にも惹かれますよね。
たとえば粟野さんは「進撃の巨人」がすごいと言います。
ホシノは「ちひろさん」がすごいと思っています。
どちらもメッセージ性を明確にして書いている訳ではなく、作者は描かされている、という感覚なのかもしれない。
その域にまで行けている人の作品にも、大きな魅力を感じます。

思えば、お金を稼ぐ仕事でもそういう性格のものって多いですよね。
あらかじめ目的や得られる利益、メリットを表明した上でサービスを提供していく。就職していく。
それにはそれで意味を感じつつも、たまに抵抗したくなったり守りたくなったりする何かを感じたりもする。
きっと世の中にはそうした逡巡や違和感を抱えながらはたらいている人たちも多いはずでは。
この番組がそんな皆さんの癒しになれればと、あらためて思いました。

曖昧さにも価値を見出していた時代の象徴として、粟野「先生」にはこれからも本の解説を続けていただきたいものです。

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ちなみに今回の収録後には、「進撃の巨人」を読まねば、と思いました。
次々と増えていきますね…。消費に追われてきたかもしれないと思うホシノでした。
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