#127 人生相談 「自分の頭が悪い」問題

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★相談者:youtubewatcher さん
毎度楽しみに観ています。ご多忙のおふたりがこうしてまめに更新してくださること、改めて感謝です。いつもありがとうございます。
あきさんのご苦労、とても共感します。世の哲学書の数より、自分が漏らした溜息の方が多いのではないかと思うくらいです。個別に様々な難しさがありますが、荒っぽく括ると「大陸哲学的なもの」と「分析哲学的なもの」で異なる困難のパターンがあるような気がしています。
前者は「暗黙の了解」が極端に多く、ハイコンテスクトなとっつきにくさがあります。ところが、著者のクセやノリ、問題意識、背景文化にじっくり浸ってから読むと、ひとつひとつの語彙は意味不明なのに「なんとなく分かる感じがする」瞬間があるのです。急にドゥルーズが「歌えちゃう」ような。もちろん、あとから読み直すと色々不足に思い至るのですが、こういう熱に浮かされたようなエピファニーは存外、大切なように思います。
後者においては反対に、個々の言葉の部分は明瞭であるにもかかわらず、なかなか論理展開が掴めず、理解がうなぎのように逃げていく困難があります。これは数学的な難しさだと思います。一行躓くとそこから進めない、厳密な論証のハードさです。そこに外国語(あるいは訳文)の軛も重なりなかなか大変ですが、こちらは時間をかけて整理・理解していくと一段ずつ山を登っていくような愉しみがあります。
いずれの場合でも、理解が苦しくなるとつい「どうせ自分の頭が悪いから」と嫌になってしまう日があります。IQ、教養、あるいはセンスがないからと。しかし、じつはこれが大きな「読書の罠」なんじゃないかと(自戒を込めて)考えています。持ち合わせはどうあれ、虚心坦懐にテクストを読み、他者と深め合いながら頭を悩ませる以外に道筋はない筈なのに、中身の定かでない「自分の頭」ばかり気になってしょげてしまう。この不毛な鬱屈と挫折さえなければもっと伸びやかで充実した読書ができるのにな、といつも口惜しく思っています。
自尊心とかバイアスとか(はたまた現国教育とか文化資本とか)色々な問題が関連していると思いますが、吉川さん山本さんはそんな「罠」ーー「自分の頭が悪い」問題ーーとどのように対峙しておられますか(というか対峙することはあるのでしょうか)。長い読書人生、どんな巧緻でサバイブしてこられたのですか。
要領を得ず長い質問になり恐縮ですが、いつの日かちょうどいいタイミングがありましたら、ゆるりとお聞かせいただければ幸いです。

★酒井泰斗、吉川浩満「非哲学者による非哲学者のための哲学入門読書会」
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★酒井泰斗、吉川浩満「非哲学者による非哲学者のための(非)哲学の講義」
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