「自己言及的存在論講義」第七回  転換と自己言及性

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今回は、私の哲学探究における最大の転換についてお話しします。その転換とは、私自身が背負っていたパラドクスを、テキストのパラドクスへと外在化させた、ということです。この転換が、パラドクスの解決への途を開きました。また、自己言及性という概念が、この転換を可能にしてくれました。この用語には、八〇年代の柄谷行人のテキストを通じて出会いました。「嘘つきのパラドクス」と呼ばれているものです。これに、自分の課題に適合するよう手を加えることで、自己言及的存在論の構想が生まれます。自己言及的存在論は、自分自身を根拠づける存在論です。それゆえ、この転換はさらに、ハイデガー『存在と時間』の源泉へと私を連れ戻します。というのも、『存在と時間』の源泉には、自分自身を根拠づける学の不可能性が横たわっているからです。これによって、自己言及的存在論は、講義第一回の紹介文で言ったように、「ハイデガー哲学の源泉にある根源的存在論の不可能性を可能性に転じる」という意義を持つことになるのです。

塚原誠司 1944年東京生まれ。1967年、早稲田大学文学部西洋哲学科卒業。労働運動系広報誌の編集者、塾講師、警備員などをやりながら哲学を探求してきた。

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