ep34-2 「自由が上演される」(渡辺健一郎さん)-情熱・ワークショップ化する社会・”たかが野球”-

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読書の時間34冊目「自由が上演される」渡辺健一朗さんの2週目は、キーワード3つを扱いながら、互いが興味ある教育・ワークショップなどについて議論を重ねていきます。

1.知性を放棄した、意志による教育
ジャック・ランシエール(仏)の「無知な教師」をベースに、「知性ではなく、意志(情熱)による、教師と生徒の格差」が必要であるというお話。

「多くのことを知っている・頭脳明晰」などではなく、
あくまで「何かを学び続けたい・新しい発見は面白い」といった情熱を持った教師が、
生徒にその姿を見せる/魅せる、という意味と解釈しました。

2.ワークショップ化する社会
教育界が受けたとされる2大インパクト(フーコー・インパクトとドゥルーズ・インパクト)を経て、
「(見せかけの)自由を演出するため(自由促進型教育)」や
「(教師と児童・生徒の)パワー・ハラスメントを回避する」といった目的のため、
ワークショップやアクティブ・ラーニングが人気を博した、という側面への指摘がされます。

星野さんからの「ワークショップなどは、欧米起源のもの。
例えば”三日三晩飲み明かす””闇鍋をつつく”といった、
本音と建前を使い分ける日本人のあり方に適した手法が合っても良いのでは」というコメントにはハッとさせられました。

3.上演としての教育
書籍名にもつながりますが、
教育も、演劇も、スポーツも、演奏会も、「あくまでその場限りの”上演”」として、強い限定性を意識すべきではないか、というお話。

ビジネス中心に人生全てが、盛和塾(京セラ・稲盛氏の教え)万歳や、
「ドラッカーがこう言ったから◯◯すべき」だと、お付き合いし続けづらい。

野球のダルビッシュ選手がWBCの際に言った、「たかが野球」。
野球に真摯に向き合いつつ、けれども
「ちょっと待ちなよ、他の選択肢や大事にしたいこともあるはずだよね」
という意味合いだと思います。

社会の過渡期かもしれませんが、多くのことが「ハラスメント」とされるリスクを恐れ、
「優しさという残酷」が静かに広く深く浸透している、2024年現在。

難度は高いですが、教師も、上司も、経営者も、親も、何らか場面のリーダーは、
「情熱による格差(ハラスメント)」を恐れず、
一方で、児童・生徒、部下、従業員、子ども、場の参加者たちは、
ある意味で、舞台上の”演者”の姿・発言を、離れた客席で見る観客が持つ非対称性を維持し、
「ここで演じられていることは、この場限りのもの。終わればまた別の世界線がある」
と冷めた認識をすることがポイントなのだろうなと感じています。

日本社会の中での生きづらさを助長していると感じる、
過度なハラスメントリスク、自由促進型教育(ダブル・バインド)、自粛警察的なあり方、
そういったものに対して一石(以上)を投じてくれる、気づき多い書籍だと感じています。

それでは、34冊目の3週目でもお会いできればと思います。

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