ep25-2「不道徳教育講座」(三島由紀夫さん)

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引き続き、三島由紀夫さん著書の「不道徳教育講座」を扱っていきます。
今回は、3つのキーワードを元に、過去に読書の時間で扱ってきた作品の内容と関連付けて解説していきます。
 ・人の恩を忘れるべし
日々生きていると恩を受ける機会がありますが、三島さん曰く「受けた恩を忘れるべきだ」と。恩が原因で、人間関係を固定化させ、縛り付けて不自由にしてしまう可能性がある訳です。言い換えれば、恩が人生の貸借関係をつくってしまう。自分が恩を与える立場に立ったときには、リターンが戻ってくると思わないことが大事です。第6回で扱った伊藤亜紗さんの「利他とは何か」でも、「相手をコントロールしないのが利他の最大のポイント」と書かれていました。特に、親は、子どもに対して育てた恩のリターンを求めてしまうところもあるので、要注意。後輩におごる論もよくある話ですが、自分へのリターンを求めるのではなく、さらに下の世代へと恩を送る流れが生まれるとよさそうですね。ちなみに三島さんは、身勝手ですぐに恩を忘れるという点で、猫がお好きだそう。 
・キャッチフレーズ娘
これは、三島さんがとある女性に対して好きな音楽を尋ねた際に、キャッチフレーズ的な言葉で回答されたというエピソードについて書かれた章です。自分で考え、自分の言葉を繰り出すわけではなく、誰でも言えそうなキーワードやキャッチフレーズなど、借り物の言葉ばかりを使っている人々への批判とも言えます。インプットを重視している人はこの状態に陥る可能性が高いので注意が必要ですね。三島さん曰く、時代の影響を受けキーワードやキャッチフレーズを利用するのは仕方ないが、自分の頭で考えて自然な機知(ウィット)に富んだ言葉を使うのが大切だとか。第23回、千葉雅也さんの「勉強の哲学」に書かれていた、「知識を深く掘った後にユーモアで自分なりに思考を横に広げていくことの大切さ」と似ていますね。 
・言葉の毒について
それ自体に破壊力が備わっているという点で、「言葉には毒がある」と三島さんは述べられています。噂が回りに回って潰れた最近のアメリカの銀行は、言葉の破壊力を実感する例ですね。特に、対面で言われる自分の批判以上に、陰口や悪口は言い返すなど対応することができないので、腹立たしいものだと三島さんは語られています。また、以下のような文章もありました。「第三者から言われている悪口・陰口がもっとも自分が見たくないもので、それが本当の自分ではないのか」。当時、メディアなどにも叩かれていたであろうにかかわらず、客観的に自身のことを顧みれる三島さんの姿勢が感じられます。
ただ、この言葉はあまりにも威力が強い。そんな時に、第21回で扱った「自分の中に毒を持て」の岡本太郎さんの考えが救いになります。「人間なんて欠点あって当たり前、そんなのを気にしている場合ではない、日々自分を変えていけ」。
 
三島さんのこの3つのエッセイのテーマはどれもインパクトがあり、ついつい余談も盛り上がってしまいました。
過去扱ってきた書籍と紐づけられると、より理解が深まっていく手応えがありますね。

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