012.朝礼は労働時間?

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Q:店長です。当店では各時間帯で朝礼を行っており、勤務開始の10分前に来るようにとスタッフに言っています。あるとき、スタッフから「朝礼は強制ですか。だとすると、給料が発生しますよね」と言われました。これって、やはり給料が発生してしまうのでしょうか。

A:朝礼の参加をスタッフに義務付けた場合は労働時間の扱いとなり、給与の支払い義務が発生します。朝礼は店舗運営力向上のための有効な情報共有手段ですが、労務管理上において、その扱いをはっきりさせておく必要があります。

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<解説>

もっと店を良くしていきたい。その志から、朝礼を導入している店舗も多くあるかと思います。かくいう私も、店舗勤務当時は朝礼を行っていました。勤務開始時刻の10分前に来て、5分以内で準備と着替え、その後5分で朝礼というタイムスケジュールでした。遅れてくるスタッフは遅刻扱いにはしないものの、来るのが当たり前だ、と伝えていましたので、実質的に強制参加に近かったと記憶しています。

ちなみに、今回は朝礼の強制参加がダメ、という話ではなく、いくらスタッフとの同意の上であれ強制にしたら、その時間は労働時間とみなされる、つまり給料が発生する、というお話です。

 

【労働時間とは何か?】
そこでまず、労働時間とは何か、という少しカタいお話をします。これは、実は法律上で明記された定義はなく、「三菱重工業長崎造船所事件」という裁判が元になり、「使用者の指揮命令下にある時間=労働時間」という考え方が一般的になりました。この事件では、造船所の業務にあたるための安全服への着替えなどが労働時間になるかが争点となりました。最高裁まで争った結果、仕事を進める上で義務付けの強いものについては、定められた業務時間中でなかったとしても会社の指揮命令下にある状態となり、給与支払いの対象になる、と判断されたのです。

これに当てはめると、勤務開始時刻前の朝礼は、5分でも10分でも、強制とした場合には、労働時間の扱いとなります。また、厳密に言うと、ユニフォームへの着替えも、上記の裁判例ほど時間はかからないものの(長くても1分程度)、その管理方法や義務付けの強さから労働時間の扱いとなる場合もあります。パート・アルバイトの場合は、時給の分換算で計算されることになりますが、フルタイムの社員だと、8時間みっちり通常勤務している場合には時間外労働、つまり残業代の扱いになってしまうこともあるのです。

 

【実務上はどうするか?】

ここまで見てきたことは、オーナーや店長にとって厳しい見方となりますが、ここからはそれを踏まえて実務上、店長として判断するべき選択肢を見ていきます。

①労働時間と認識した上で、朝礼参加を義務付ける

やはり、店舗をより良くしていくための手段として、朝礼での情報共有は有効です。新商品やキャンペーンのお知らせから注意事項まで、直接スタッフの目を見て伝えられるからです。所要時間も5分〜10分程度と短いため、義務付けして、給与も支払う、という選択肢があります。

②朝礼は自由参加、勤務時間中に連絡ノートを読んでもらう

朝礼を強制参加とすると労働時間の扱いとなってしまうのが困る…という場合は、朝礼は自由参加とすることになります。もっとも、自由参加ではなかなか集まりにくいでしょうから、店をより良くしていくために店長からスタッフへ協力を依頼することは可能です。あとは、連絡ノートを活用し、勤務時間中、あるいは自由な意志のもとに確認してもらう、という方法でカバーすることになるでしょう。

③朝礼はしない

もちろん、朝礼をしない、という選択肢もあります。普段のコミュニケーションがしっかり取れるならば、必ず朝礼をやらなければならない、というものでもありません。

 

 

【懇親会、イベントなども強制参加の場合は注意】

なお、似たような事例で「懇親会の企画と参加」というものがあります。いわゆる飲み会やスポーツなどの店外イベントです。これも、強制参加とすると、懇親会であっても「指揮命令下にある」となり、労働時間として給与支払いの対象となります。なかなか24時間営業の多いコンビニで強制参加というのも難しい話なので現実的ではないかもしれませんが、企画時にはぜひご注意ください。

 

【自主的な行動でもメリハリは必要】

一般的に、出勤時刻ギリギリの出勤では実勤務に支障をきたす可能性があります。そのため、余裕を持って店舗に来ること、早く来たらユニフォームに着替えて、連絡ノートを見て…という話になります。これを、自主的にスタッフが行ってくれる場合は、非常に積極的な姿勢でありがたいことなのですが、やはり、店舗としては「どこから労働時間になるのか」をスタッフにしっかりと伝えられると、スタッフも安心ですね。

労使のトラブルはいつも、互いの「曖昧さ」から生まれます。有利か不利か、といった判断の前に、まず正しく知って活用することも大切です。

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