005.派遣スタッフがフライヤーでやけど!

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Q:派遣スタッフが店舗のフライヤーで大やけど!労災は?

A:派遣スタッフを雇用しているのは派遣元企業ですので、派遣元企業が労災手続きを行います。ですが、仮にそのフライヤーや店内備品の管理体制が著しく悪いことによって派遣スタッフが傷害を負ってしまった場合、派遣先である店舗が責任を負わされてしまうこともあります。

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<解説>


店舗の設備・機器の性能が向上し、提供するサービスも増えている今、お客さまの満足度もどんどん向上しています。しかしその反面、オペレーションの複雑化につながったり、スタッフが危険にさらされたりする可能性も高くなってきています。例えば、派遣スタッフが皆さまの店舗にあるフライヤーで大きなやけどを負ってしまったら…いったいどのような対応が求められるのでしょうか。今回は派遣スタッフの労災保険について見て行きます。

 

まず、労災保険とは、「労働者災害補償保険」の略で、スタッフが業務中、ないし通勤途中に負ったケガや労働がもとで病気になった場合に、治療費や生活補償のために給付される国の保険です。就業先となる場では、スタッフが安全に仕事できる環境を作り、維持する義務(安全配慮義務と言います)が課せられ、アルバイト、社員にかかわらず、スタッフを一人でも雇うと加入義務が発生します。保険料は全額事業主負担ですが、そこまで高くない上(コンビニエンスストアは1年間に支払った全スタッフの給与総額×0.0035 例は図表を参考)に、未手続きの場合は罰則もあるため、「まだウチ労災に入ってないよ…」というところはぜひ加入手続きを進めておきたいところです。段ボールやセロテープカッターで切った、などの小さなケガ程度であれば、わざわざ病院に行くこともないかと思います。しかし、大きなケガをすると病院を利用する可能性も高くなります。そうした際に、的確な情報がなければ右往左往してしまい、結果スタッフの命が失われる、ということもあり得るのです。

 

さて、派遣スタッフがフライヤーでやけどを負ってしまった場合の手続きについて見ていきます。派遣スタッフは派遣会社で雇われているので、派遣会社がそのスタッフの労災手続きを行うことになります。ただし、実際には勤務先で事故が発生するため、まず、派遣先である店舗が、派遣スタッフを近隣の「労災指定病院」に案内する必要があります。その後、派遣元となる派遣会社とやりとりを行うことになりますが、その際、労災事故の発生状況を派遣会社に報告することになります。また、出来る限り早く「労働者死傷病報告」という定められた様式(書類のこと。労働基準監督署に取りに行くか、厚生労働省のホームページからダウンロードできます)を記載し、店舗のある地域を管轄する労働基準監督署へ届け出ることになります。そして、そのコピーを派遣会社へ送るのです。いつ、どこで、どういった状況でケガが発生したのか、ということを細かく記載する必要がありますので、派遣スタッフと一緒にいた店舗スタッフがいる場合、彼らから詳細な事情を聴かなければなりません。その後は、基本的には派遣会社やその派遣スタッフが手続きを行います。

では、発生した労災事故は例えばこのとき、フライヤーやフライヤー周辺の管理状況が著しく悪く、派遣スタッフが「店舗の管理状況が悪いせいで自分はやけどをした」という申し出があった場合はどうなるのでしょうか。この場合、派遣先である店舗に少なからず責任が生じる可能性が出てきます。フライヤーのある店舗では、高温の油を使い商品を揚げたり、保温庫を清掃したり使用済みの油を新しい物に入れ替えたりします。その際に足元がゴミや備品だらけで歩きにくい環境だと、その備品につまずきケガをするケース、棄てたばかりの油の缶が無造作に置かれていることで、その缶を蹴ってフタが開き高温の油が大量に足にかかるケースなど、多くの危険が潜んでいるのです。そうした職場環境の整備や管理を怠っていた場合に派遣スタッフがフライヤーの油でやけどをしてしまったら、最悪の場合、派遣先の店舗に対し派遣会社や本人などから損害賠償を請求される可能性があります。仮にそれがケガではなく、死につながる事故になってしまったら…その額は何千万円にもなるのです。

もちろん、一概に店舗がその賠償を被るわけではなく、派遣スタッフの動きや派遣元である派遣会社での説明が十分だったかどうか、という点も見られていくため、実際に損害賠償が発生したとしても、派遣会社と店舗で過失相殺による減額もありえます。逆に、労災事故の報告を怠ったり、嘘の報告をしたりすると「労災隠し」、つまり違法行為となり、処罰の対象になってきます。しかし、最も大事なことは、こうした問題に発展しないよう、普段からケガややけどの事故が起こらないように、店舗環境を整備していくことなのです。

 

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