ep36-3 「日本企業はなぜ「強み」を捨てるのか」(岩尾俊兵さん)-カイゼン・オープンイノベーション・ティール組織-

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引き続き、読書の時間36冊目は、
慶應義塾大学准教授の岩尾俊兵さんの著書、
「日本企業はなぜ「強み」を捨てるのか 増強改訂版『日本”式”経営の逆襲』」を扱う3話目。

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キーワード2つ目は、
「逆輸入される日本の経営技術」
まず著者は、曖昧模糊とした解釈をされがちな「経営」という言葉を、
3つに分解した理解を提案します。

・経営成績・・・株式時価総額、売上高、など
・経営学・・・・世の主流とされるアメリカ式経営学、ドイツ経営学など
・経営技術・・・企業経営の現場にある技術、ノウハウ、フレームワークなど

もし「経営」を上記3つを分解せずに解釈している場合、

「日本企業の時価総額ランキングは、失われた30年で凋落した。だから日本企業はだめだ」
「経営学の最先端はアメリカで、日本の経営学は遅れている。キャッチアップが必要だ」
「◯◯というGAFAMの最新フレームワークを導入して、日本企業の経営をアップデートしなければならない」

といった表現をされながら、日本企業の劣位が解説される場面が多いように感じます。

しかし、著者曰く、「経営」を3つに分解して捉え直した時、
こと経営技術に関しては日本企業にもともと素晴らしいものがある。
なのに、同じもの(経営技術)をカタカナ語に変換されただけで欧米から逆輸入してしまうことで、
本来持っていた日本企業の経営技術が消され、
日本企業の弱体化を招いているのではないか、と指摘されます。

その具体例として、
両利きの経営、オープンイノベーション、ティール組織、リーン・スタートアップ、
アジャイル開発、スクラム開発、ボトルネック、コンカレント・エンジニアリングなどが
本書では挙げられています。

この読書の時間では、そのうち3つ経営技術用語を取り上げました。

▼両利きの経営(既存事業=知の深化+新規事業=知の探索、その両方やっていくことが大事ですよ)

素朴な疑問;
トヨタ生産方式のカイゼンのように、デンソーが既存の生産ラインを動かしながらも、
新しく製造指示書(カンバン)を効率的に処理する新しい方法として「QRコード(クイック・レスポンス)」を
生み出したように、日本企業でも普通にやっていることなのでは?
改めて、欧米から「両利きの経営が大事ですよ」と言われて、改めてやることなのだろうか。

▼オープンイノベーション(企業の内と外の技術をうまく活用して新しいよきものを生み出していきましょうね)

素朴な疑問:
日本企業の「ケイレツ」は、1企業で製品を完成するのではなく、複数の企業がそれぞれの知見を活かしており、
オープンイノベーションのわかりやすい事例として、ずっと存在しつづけているのではないか。
今更、カタカナ語で啓蒙される必要は無いのでは?

▼ティール組織(組織が1つの生命体のように自然に機能し、人がその人全体として受け入れられている)

素朴な疑問:
(問題箇所はありつつも)日本企業の特徴とされた、終身雇用・年功序列・企業別労働組合だったり、
メンバーシップ型雇用(職務、場所、時間が無限定だと、ジョブ型雇用の対で批判されましたが)だったり、
日本企業はもともと、ティール組織の多くの要素を自然に持っていたのでは?
(読書の時間4冊目「日本社会の仕組み/小熊英二」でも扱ったように)
日本企業といっても、大企業以外は終身雇用ではなかったにせよ、
その企業に入って、自分も家族などもまとめて面倒を見てもらえる(ホールネス)、
だからこそ安心して仲間に貢献しようと仕事に取り組め、
個人の損得勘定だけではない取り組みもできるのではないか。

Ep04-1「日本社会のしくみ」
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私(粟野)は、まさにこういったカタカナ経営ワードになんとなく新しさを感じてしまい、
「逆輸入」されていることに無自覚な人間でした。

著者も仰るように、「だから日本企業は過去のやり方にもどればいいんだ」とは違いますが、
ワーディングがかっこいいしなんとなく新しくて良さそう
経営成績が圧倒的に高い欧米企業がやっていることだからいいに決まっている
などのミーハーな感覚で、それを取り入れたり、周囲に喧伝したりすることは
全くよろしく無いことだなと強く感じます。

収録では、時間制限も気にしながらやや駆け足で興奮気味にまくし立ててしまいましたが、
普段何気なく使っている言葉を、違った側面から見てみる機会になればと思っております。

次回、36冊目の4話目は、キーワード3つ目
「文脈依存度を下げるべきなのか」を扱っていきます。
それではまたお会いできることを楽しみにしています。

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ep36-3 「日本企業はなぜ「強み」を捨てるのか」(岩尾俊兵さん)-カイゼン・オープンイノベーション・ティール組織-

タイトル
アワノトモキの「読書の時間」
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