010.自己都合で退職するスタッフが「会社都合にしてほしい」と申し出てきたら?

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Q:自分から退職を申し出たスタッフが、数日後「会社都合の退職にしてほしい」という要望を出してきました。スタッフにとって条件が有利になるらしいからだそうですが、これって断ったほうがいいのでしょうか。

A: 会社(店舗)側が、特にスタッフを辞めさせたわけでないのであれば、断ったほうが良いでしょう。後々トラブルになる可能性もあります。

 

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<解説>

退職の理由には、大きくわけて2つあります。一つは自己都合退職です。スタッフが自身の理由により「退職します」と言ってくるものです。もう一つが会社都合退職。例えば店舗の閉店により働けなくなった場合や、業績の悪化に伴うリストラ、採用時に提示された労働条件とあまりに違う不利な労働条件で働いたスタッフが退職をするなど、店舗側に要因があってスタッフが退職をする際に会社都合退職となります。
しかし、本来は自己都合退職のはずなのに、ある程度長く勤めたスタッフが突然「会社都合退職にしてほしい」と言ってくることがあります。インターネット上では、「会社都合退職にしてほしいと会社に言いましょう」というサイトが多数存在しており、それを見聞きしたスタッフが「これはいい」ということで、交渉してくるのです。それでは、なぜか会社都合退職になると、スタッフにとって有利になるのでしょうか。

【失業保険の受給条件が大きく違う】
実は、これは雇用保険に入っているスタッフにとっての話なのですが、自己都合退職と会社都合退職とで、大きく条件が変わってくるからなのです。具体的には、図表のとおり、失業保険(正式には失業等給付の基本手当)がもらえる条件やタイミングに大きな違いが出てきます。自己都合退職の場合は最低でも被保険者期間が1年必要であり、退職後、7日間の待機期間のあと、3ヶ月の期間を待ってから失業保険を受け取ることになります。これに対し、会社都合退職の場合は被保険者期間が半年以上でよく、7日の待機期間後、すぐに所定の手続きを経て失業保険を受け取ることができるのです。また、状況によってはもらえるトータルの金額にも違いが出てきます。これは、仮に今の職場を退職してすぐに次の職場が見つからない場合、3ヶ月の支給保留期間があるとその間の生活費を稼ぐ術が限られてしまうことから、不利な条件で退職をすることになった人がもらいやすい仕組みになっているのです。
(一部、自己都合退職であっても条件によっては失業保険を早く受け取れる場合があります)

【会社都合退職は安易に出さない】
自己都合と会社都合の違いでこれだけ有利になるのなら…と、スタッフの申し出に対し、優しいオーナーが快く会社都合退職にすることを見かけるのですが、これは少し待った方が良いです。なぜかというと、会社都合にした、ということは、店舗やそのスタッフにとって不利になる可能性も出てくるからなのです。
最初に店舗の面から見ていきますと、まず、助成金の受給に影響が出てきます。例えば、一定条件のもと、アルバイトや契約社員から正社員に切り替える制度を入れた事業所で一人当たり60万円が受給できる「キャリアアップ助成金」というものがあります。仮にその助成金を活用することになったとしても、会社都合退職を一人でも出した店舗は、退職日以降6ヶ月間助成金を受けることはできません。すでに受けている後に会社都合退職者がいることが発覚した場合には、助成金の返還を求められることもあります。助成金の受給を検討している、あるいは受給申請を進めている場合には注意が必要です。
また、一度でもその状況を許してしまうと、他のスタッフにも知らない間に広がってしまい、次から次へと同じような申し出が来てしまうことにもなりかねません。
それだけでなく、安易に会社都合退職に応じたことで、そのスタッフの採用活動や次の就職先に少なからず不利な影響を与えてしまうこともあります。そうなると、スタッフの次の夢や目標を応援しようと思っていても、真逆の状態を引き起こしてしまいかねません。スタッフが自ら退職を申し出てきた場合は、その理由をヒアリングするとともに、正しい手続きを行うことをお勧めします。

【会社都合なのに自己都合にするのもタブー】
最後に、今回の質問からは少し外れますが、これまでの逆、つまり、会社都合なのに自己都合退職にするのも、当たり前の話ですが危険です。本来は会社都合退職なのに、助成金をもらうためというような理由で勝手に自己都合退職にすると、トラブルの元となります。先述の通り、失業保険の受給にも違いが出てくるため、仮にスタッフがハローワークで「本当は会社都合で辞めさせられたのに、自己都合に変えられた」という話をすると、会社に調査が入ることになります。また、仮にこの手法で助成金を受給することになると、不正受給につながります。
やはり、無用なトラブルを生み出さないためにも、店舗として正直な対応をしていくことが大切ですね。

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